大正2年1月、全国で26番目の上水道として「甲府の水道」が給水を開始しました。
今を去ること100年以上前のことです。 水質の良い井戸が少なく、既存の用水も衛生的でなかった甲府市にあっては、それは長年の悲願であり、同月10日には愛宕山の配水池で盛大な開通祝賀式典が催され、近隣の尋常小学校の児童が小旗を振り、歌を唱いながら配水池まで行進したそうです。
このとき歌われたのが「甲府市水道開通式の歌」で、その後しばらくは、唱歌として小学校などで歌われていたそうですが、やがて時の流れに埋もれてその存在すら忘れられ去られていました。
ところが昭和61年9月、千葉県船橋市に住む花形ふみえさん(当時83才)が自らこの歌を歌って吹き込んだ テープを上下水道局に寄せられ、74年の空白を経てまた世に出ることになりました。
当時、琢美尋常小学校の三年生だった花形さんは、開通式当日全校生徒と共に小旗を振りながらこの歌を歌って配水池まで 行進し、その後も校内で行事があるたびにこの歌を歌ったので、校歌は忘れてもこの歌だけは覚えていたということです。
上下水道局ではこの歴史的資料を次代に伝えるため、上下水道局庁舎入り口わきに歌碑を建て、花形さんのご厚意と「甲府市水道開通式の歌」 をながく保存しています。
甲府市水道開通式の歌 作詞、作曲者:不明
1. 金峰の山に水晶の 雫こぼれておちにけん
底の小石(さざれ)も数うべき 流れも清き荒川や
2.名にこそたてれ金渓の 勝地を過ぎし下流にて
甲府市水道作らんと 宿望ここに 二十年
3.三年あまりのいそしみに 施業ことごと成就して
蜘蛛手(くもで)に走る鉄管は 満てり延寿の菊の水
4. ああ大正のへき頭に 市の発展の前駆する
開通式の盛典を 祝えや市民五万人